みなさん、あけましておめでとうございます。

豆蔵ソフト工学研究所の所長の羽生田栄一(はにゅうだ えいいち)です。

2008年12月に、豆蔵社内にいわゆるヴァーチャル組織として「豆蔵ソフト工学研究所(通称:豆蔵coラボ、コ・ラボ)」を立ち上げ、その情報をこうして皆様に発信できるようになりました。今年はこの研究所をコラボの場として育てていきたいと考えておりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

我が家ではお正月に上野詣でをして(といっても徳川家定と篤姫の墓のある寛永寺にではなく) 国立博物館国宝室にておめでたい縁起物の眼福に預かるのが恒例になっています。過去にここで宗達の風神雷神図や等伯の松林図屏風を堪能し1年の元気をもらっていたので今年もと期待したのです。なんと今回は一遍上人絵伝という変化球でしたが、中世の風物画としてその細密さを楽しむことができました。国博に来る(あるいはお寺で仏像を拝み見る、古い神社の森を見上げる)と、あぁ日本に生まれてよかったと毎回思うのであります。こうした日本の伝統が息づいている限り、日本のオリジナリティは世界のどこにも負けないと元気づけられます。参観者には、フランス人、中国人を中心に外国人カップルが非常に多かったです(彼らの間でも仏像流行っているようです。スシの次はブツですかね)。

そして勢いあまって、国博の帰り道に科学博物館で漫画モヤシモンとコラボ!開催の菌類の不思議展も見てしまい、展示企画者の細谷さん(新種の菌やキノコを発見している注目の菌類ハンター)のギャラリートークまで聞いてしまいました。大量のキノコの実物標本展示が圧巻でしたが、それとコウジ菌やカビとが同類というのが何とも不思議な自然の神秘です。菌類の分類体系はまだ未確定部分が多いそうで、ある意味最先端の研究成果を提示しているのです。しかも第1線の研究者が、展示内容だけでなく一般人へのアピールや子供の科学離れを防ぐといった意図も込めてコウジ菌(この愛称がモヤシモン)に絡んだ発酵や醸造を初めとして農生物科学を舞台とした漫画『モヤシモン』とのコラボを実現したのです。会場のそこかしこに作者の石川雅之さん手書きの原画やせりふが描かれていて、それを見る楽しみでリピータが多いらしいのです。公式カタログまでもやしもん漫画本のサイズと装丁で売られていました。(科学博物館だけでなく、数年前から国立博物館も、正月展示や面白い企画たとえば時空を超えた画家どうしの同一テーマでの対決など、顧客を意識した企画や展示が実施されているのをひしひしと感じ、それも心強い限りです。)

新年に生産管理やインダストリアル・エンジニアリング分野で「もの・こと分析」を提唱している中村善太郎先生(慶応大学名誉教授)にお会いする機会がありました。興味深いお話がタンと聞けたのですが、中でも印象に残っているのは、故土光敏夫さんか石川島播磨重工業(現IHI)時代に部下が描いたボイラーの設計図を突き返し「蒸気の気持ちが分からないとよい設計はできないぞ」と言ったというのです。これは私も昔ゼロックス時代に薫陶を受けた故竹中専務のいう「自然さまに逆らうなよ」という言葉にも通じるものです。自然法則を感情と刷り合わせながら理解するように努めているというアニミズム=エンジニアリングともいうべき非常に興味深い境地が日本のエンジニアや職人(当然、農業・漁業も同じだろう)の中にはあることがわかります。

経済的には現在、日本を含む世界全体が厳しい環境の中にあります。しかし、そうしたときにこそ、「原点に帰り、自分達の強みをもう一度しっかり認識し、そこからビジネスを発展させる」べきだと思います。日本の強みは自然と共生する農林水産業とそれに付随した花鳥風月大衆文化とモノづくり先端技術のすべてにおいて洗練の極みだということです。これらが現代的なニーズである安全・食料・バイオ・環境・観光・教育・福祉・医療と融合しローカルのよさを維持しつつ世界経済につなげられれば、大きな産業のうねりになるでしょう。短期的には関連したコミュニティがくずれる寸前の部分もありますが、その重要さに気づき、新しい観点と技術(とくにITの力は大事です)と若い力が結集できさえすれば、今からでも十分取り戻せると思います。

そして発展させる際には、菌類の不思議展の企画のように、これは科学だからということでしゃちこばった考え方をするのではなく、漫画でも子供でも先端技術でも「常識に囚われず、役に立つものは何でも使う柔軟さが大事である」ということも教わりました。9.11で幕を開けた21世紀は世界大不況(時代も違い大恐慌というのには躊躇があります)を乗り越えることで大きく展望が開かれると思います。今は生みの苦しみです。こうしたときほど、芸術や生物といったビジネスよりずっと息の長い柔軟でしたたかな分野の知恵を片目で睨みながら、自分達の分野の改革を進めていきたいものだと強く念じた新年です。

創刊第2号に相当する本サイトでは、当社研究員による前回以上に多彩な記事を用意しました。オピニオン、モデリング、SOA、プロジェクトマネジメント、・・・そして栄養学、Webニュース、図書紹介まで。この中から1つでも皆さんの心に響くもの、皆さんの現場で役に立つものを見つけていただけたらならば幸いです。

あらためて、本年もコラボへの皆様からのご支援・ご声援のほどをよろしくお願いいたします。