豆蔵ソフト工学ラボ所長の羽生田です。

2010年度もスタートし、ゴールデンウィークも終わってそろそろ梅雨が気になる時期になりましたが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。本年度初の最新号の豆蔵コラボ記事をお届けいたします。

みなさん、アジャイル(agile)という言葉を聞くことが多くなってきたと感じませんか?「すばしっこい、敏捷な、機動的な」といった意味ですが、一言でいえば臨機応変という語がいちばんしっくりくるかもしれません。ビジネスのニーズや都合に応じて開発(や実現)がリアクティブに応じることを最重視するスタイル全般を指すと言ってもいいでしょう。ビジネス駆動、ビジネス―開発一体型という表現もできるかもしれません。

そもそも経営学の世界でアジリティ(agility)という要素がグローバルな変化の激しいマーケットを相手にしたビジネスでは重要だという言い方がされるようになったのが始まりで、ITの世界では、XP(eXtreme Programming)という開発プロセスが、少人数チームが顧客要求も設計も実装テストもすべて担当し、1‐2週間単位の反復の繰り返しでペアワークを繰り返しながらインクリメンタルにじょじょに大事なところから少しずつ実働検証を重ねながら、アーキテクチャを構築していくことの重要性を主張し、その成功例が知られるようになり、SCRUM(スクラム)と呼ばれる反復型チームマネジメントの手法が整備されるようになってから一気に普及しだしました。

現在、米国では開発プロジェクトの半数以上において何らかのアジャイル的な手法が採用されるようになってきており、その意味でも、アジャイルは一般に認知され普及のカーブを曲がり始めたところにきていると思います。今後、広く一般ビジネスに受け入れられるためには、従来のエンジニア中心のアジャイルからもともとのビジネス駆動の原点に立ち返って、大規模開発や情報システム開発を含まない業務改革や組織構築そのものにも適用できる広がりをもたないと、認知はされても受容はされないということになりかねません。

大規模な開発にアジャイルを適用するに当たっては、いままで以上に核になるアーキテクチャの企画・デザインが重要になります。そしてそのコアアーキテクチャをみんなで共有するためには、ソースコードだけでなくモデリング技術を利用して「見える化」を推進しなければなりません。カウボーイプログラミングをアジャイルと称してよしとしていた風潮は改められる必要があります。

またリーン開発プロセスなどを中心にカイゼンやカンバンなどのITと直接関わらない業務改善や製造ラインのノウハウももっと積極的にITプロジェクトに取り込んでいく動きが加速しています。こちらもアジャイルがITプロジェクトだけでなく広く組織やエンタープライズレベルのプロセスに進化していく上で避けて通れないステップだと思います。その際には、ピープルウェアやファシリテーション、KJ法に代表される組織の創造性の活用といったソフト工学の実践が欠かせません。(こうした動きの一端は、アジャイルジャパンというイベントでも知ることができました。私も AgileJapan2010 のクロージングキーノートで「これからのソフトウェアプロセス」という講演をしました。 )

そういう意味で、本サイトは「ソフトウェア工学ラボ」ではなく敢えて「ソフト工学ラボ」と謳っているのだと思い起こしてもらえれば幸いです。

なお、豆蔵では、コラボとは別に、InfoQ JapanというIT技術発信サイトを運営しています。

主に米国・ヨーロッパの技術動向や新しい理論や事例の実践的なノウハウをその技術のオリジナル開発者や先行的に直接利用しているエンジニアの声を生でお届けするスタイルで、解説記事と動画インタビュー中心をに、少し込み入った内容はミニブックという簡易書籍形式でご提供しています(現在、InfoQ英文オリジナル記事を日本語に翻訳するボランティア翻訳メンバーを募集中です。興味のある方は、infoqsec peak-1.co.jp 宛て(※を@に替えてご利用ください)にご連絡ください。記事1件につき薄謝をお出しします)。

今後は、日本国内の各種IT技術の先進コミュニティのみなさんともコラボしながら、日本オリジナルの技術やノウハウを記事化して掲載することを検討中です。その中からさらに厳選したものを英語化して世界のInfoQに公開することになります。ぜひ皆様のご協力をいただきながら、日本初の技術ノウハウの発信にも貢献していきたいと思います。当コラボサイトと合わせてご支援のほどよろしくお願いいたします。