1. はじめに

第一回目の「問題とは何か」では、そもそも「問題」と言われるものにはいろいろな性質の種類があるということ、そして第二回目の「ハードとソフト」では、そうした状況であるにもかかわらず、これまでの問題解決手段のほとんどが「ハード」アプローチであるということ。そしてハードアプローチでは解決できない問題が多い現在では、「ソフト」なアプローチが必要とされていることを述べてきました。

「それはわかったんだけど、実際にはどうすればいいの?」

と思われた方もいらっしゃると思います。

今回はそうした疑問への一つのヒントとして「アコモデーション」という考え方についてお話したいと思います。

2. コンセンサス

さて、問題解決や合意形成を目的とするときによく使用される言葉に「コンセンサス」という言葉があるのは今更述べるまでもないでしょう。それほど当たり前のように「コンセンサス」という言葉はいたるところで使われています。

おそらく皆さんも会議やミーティングなどで、コンセンサスを求めて時間を費やした経験が何度もあることでしょう。しかし一旦一致したように思えた意見も、会議が終了した途端に「仕方ないから賛成したんだけど」「本当はイヤなんだよなぁ」「彼は言い出したら人のいうこと聞かないから、しょうがないよ」「妥協の産物だね」といった言葉が噴出することもよくあるのではないでしょうか。つまり本当に意見が一致することは稀であって、そう見えたとしても実はそうではない、というケースは残念ながら非常に多いのが実情です。

それはシステム開発において、システム化要求を決定するような会議の場でも同様です。各部署を代表するそれぞれの利害関係者が、表面上は「コンセンサスに達した」ように見えてもその実そうではなかったり、最悪なのはシステムが出来上がってから「そういう意味ではない」「そんなつもりではなかった」というような状況に陥ってしまうケースです。しかもそれは決して珍しい話ではありません。

つまりコンセンサスのために相手を説得したり、論理でねじ伏せたり、数値データのみから有無を言わせないような雰囲気にしたり、結局「反対が無くなる=合意している」という構図を成り立たせてしまっていることに問題が有りそうです。反対しないからと言って決して同意しているわけではなく、まして納得しているはずもなく、反論や反証の機会を持たない・持てないだけで同意・賛成したことになってしまうという状態は、好ましいものではありません。

つまり本当の意味でコンセンサスが達成されるのは、非常に稀なケースである、ということなのです。

では、どうすれば良いのでしょうか?コンセンサスが無ければ、何事も始まらないのではないでしょうか。

3. アコモデーション

そんな状況を打破するためには、目指す場所や目標を考え直す必要があります。「問題」とは、何が何でも「解決」しなければならないものではなく、「問題」にはならないように「解消」することもできるのでは?ということを第一回目に書きました。つまり「合意」と言ってもそれぞれの意見の「完全なる一致」ではなく、それらの意見のそもそもの根本にあるもの、本質的な考え方、そうした意見や考えが生まれる環境や世界観などの、各人にとっての共通の認識を合意の対象としてみてはいかがででしょうか。表層的な意見は異なっていたとしても、大本の根っ子には共有できるものがきっとあるはずです。

そのような合意のことを「アコモデーション」と言います。

アコモデーションの本来の言葉は宿泊や同居といった意味合いなので、異なった価値観を持っているもの同士が一緒に寝起きし、住んでいる状態をイメージしてみてください。日本的に言えば嫁と姑(ちょっと古いですが)、でしょうか。嫁と姑は意見や価値観が一致することは絶対にありません(断言します)。それでも一緒に住んでいるわけです。何故でしょうか?それは細かい意見の違いはあるけれども、夫(息子)という存在を共有(?)して一緒に生活を送る、そのためには夫(息子)は重要な存在であるという共有すべき価値観があるためです。そのためには、細かい差異は無視(大きな問題とは考えない)できるのです。

またアコモデーションには「列車の個室」、という意味もあります。欧米の映画などで見られる列車には、よく個室が出てきます。見知らぬ乗客同士が同じ部屋に入って、向かい合って座っている様子が思い浮かぶと思います。「異なった価値観を持つ人が同じ目標(目的地)に向かって進んでいく」と言う状況がよくイメージできるのではないでしょうか。

つまり合意形成として目指す場所を、コンセンサスではなくアコモデーションとして考えてみよう、ということなのです。

意見の完全な一致ではなくて、その場にいる人たちががみんなで持っている共有の価値観を見つけ出し、最終的な問題解決や最適解を求めるのではなく、たとえ一歩ずつであったとしても少しずつ状況を改善していこう、そこから出発しよう、という考え方です。

そしてそのアコモデーションをベースとした合意形成の方法論が、本稿のテーマでもある SSM(ソフトシステム方法論)なのです。

SSMの書籍ではアコモデーションを以下のように現わしています。

『対立関係はそのまま存在するとしても、その対立を、異なる見解を持つ人々が「ともに事にあたろう」とする上体の一部として取り込んでしまうこと』

次回はSSMについて、もう少し詳しく見てみることにしましょう。

*今回の内容は、豆尽(豆蔵メールマガジン)に掲載されたものに加筆・修正を加えたものです。