ご挨拶

こんにちは、株式会社 豆蔵で主に現場でのプロジェクトマネジメント支援や標準化導入支援を担当しております、武田知久といいます。

今回から、『プロジェクトマネジメント 現場でのプラクティス』と題しまして、私があるお客様のもとでプロジェクトマネジメント支援を担当した経験をもとに、そこから得られたシステム開発現場で共通で通用するプラクティスを紹介させていただきたいと思います。お客様のお名前も登場するなど、生々しいものとなりますが、お客様のビジネスをプロジェクトとして実現するために、お客様そして私も含めたプロジェクトメンバーが悪戦苦闘しながらもどのようにしてプロジェクトを完遂したのか、またそこから得られた知見とはなんだったのかを、皆様にお伝えしたいと思います。

さて、私がご支援させていただいているお客様は「株式会社マネーパートナーズソリューションズ(以下、MPSと省略いたします)」という企業です。近頃大変なブームとなっている「外国為替証拠金取引(FX取引)」の最大手「株式会社マネーパートナーズ(以下、MPと省略致します)」を含む、「株式会社マネーパートナーズグループ」のグループ企業にあたります。

MPS社は設立間もない企業ではありますが、大変バイタリティがあり、若くて優秀なスタッフで構成されております。また、アプリケーションアーキテクチャも質が高く、開発プロセスもRUPベース、プロジェクトマネジメントもPMBOKベースとするなど、システム開発業務面で大変質と意欲の高い企業環境にあるといえます。(なお、これらの開発基盤の構築に、豆蔵も関与させていただきましたことを、付け加えておきます。)

一方で、言葉は悪いのですが、MPS社は設立間もなく小所帯であるがゆえ、プロジェクトを遂行するといっても、肝心要の部分は同社のK部長にだけ負荷が集中している状態が続いておりました。K部長は当時、MP社が証券会社としてサービスを開始するためのプロジェクトのプロジェクトマネージャーという立場でした。しかし、突然もうひとつ大きなプロジェクトが走りはじめ、K部長がそちらの責任者も兼任されることになりました。

そのため、それまでK部長が担当されていた証券プロジェクトの旗振り役を私が引き継ぐことになりました。その際に、K部長とは私を含む豆蔵に期待する役割について色々とお話しをさせていただきました。それは、「プロジェクトで発生する様々なリスクや課題について積極的に取り組んでもらい、プロジェクトのディレクションをしてほしい」というものでした。金融知識が乏しく、金融システムの開発経験のない私には、なかなかタフな役回りでしたが、K部長から伝えられたこの役割について私なりに合意をした後は、特に細かい指示もなく、私が考えるベストと思う方法でプロジェクトを進めさせていただくことができました。

チーム形成、はじめの一歩

さて私は、それまでまったく別のプロジェクトに関わっておりましたので、MPS社に在席される皆さんとは、あまり接点がありませんでした。また、プロジェクトの状態もK部長から聞いただけで、正直全容は掴めていない状態でした。早速リーダーになって周囲を見てみると、メンバーの間で次のような会話が、ごくたまにあることに気付きました。

「あれ?××さんて、午後外出だっけ?」

今後プロジェクトを進めていく上で問題になる兆しの一つだなと、気付きました。他人の行動やスケジュールに注意を払っていないということは、すなわち変化の激しいプロジェクトにおいて、その時/その場にあった行動をチームとして実施することができず、のちのち重大な問題に発展する可能性を孕んでいる、ということが言えると思っております。

この問題を解消するために、まず「朝会」を中心に、コミュニケーションを活発にしていくという対策を採用しました。朝会は「昨日行ったこと」「今日行うこと」「問題となっていること」の確認を行うという、オーソドックスなスタイルを採用しました。あと、付け加えれば「今後の勤務スケジュールの確認」も行っておりました。最初は、朝会に参加するメンバーの皆さんに照れがありましたが、こつこつと毎日続けました。

朝会を繰り返していくと、すぐに目立った変化が表れました。まずは、メンバー同士が相手の休暇などのスケジュールに応じて、今後の作業を割り当てていくようになったことです。また、私がプロジェクトメンバーと直接意見交換をしなくても、各自が責務に応じたタスクを自らにコミットするようになりました。この時、私は「このプロジェクトは、うまく回り始めたな」と、実感しました。

その後、最終的にプロジェクトメンバー数は、MPS社で7名となりました(外部のパートナーを含めると更に多数となります)。新しいメンバーが加わっても、朝会を行っていたことで、各自から「今日やること」に対するコミットメントを引き出しやすかったのではないかと、考えております。

朝会の積み重ね、それがプロジェクト内のコミュニケーションを築きます。

電子メールでは、意図は伝わらない

「電子メールでは、意図は伝わらない」とは、何を当たり前のことを言っているのかと思われる方もおられるでしょう。しかし、意外にこの便利な道具に囚われてしまう人が多いように思います。電子メールを相手に送っただけで満足してしまい、お客様やあろうことかプロジェクトメンバーとも直接話さないという極端な人も、中に入るようです。

このプロジェクトでも、一時そういうことが見受けられました。仕様書をMP社のステークホルダーにメールで送るだけで、その後の補足なども行わず、いつまでも仕様が決まらないと嘆いているのです。そういう方に対してはK部長が、「MP社の人と直接話してくれましたか?」と、よくアドバイスをされておりました。

私は、プロジェクトメンバーに対して、「電子メールで要点は伝えるが、その後は電話や口頭で説明する」というやり方を薦めました。この方法の利点は3つあります。1つめは電子メールがコミュニケーションのレジメとしてそのまま使えること、2つめは電子メールという文書にすることで自分の考えを構造化できること、最後3つめは電話とはいえ、口頭で対話することで自分の感情を伝えやすく、相手の感情も把握しやすいこと、と言えます。

直接的な効果としては、私たちが相手に理解してもらいたいことと、相手が理解していることに相違がなくなり、システム仕様の確認やプロジェクト課題に対する対応スピードが、格段に向上したことが挙げられます。間接的な効果としては、この取り組みのおかげで、あまり接点のなかったMP社の方や、遠方にいてたまにしか会えない外部パートナーの人とも、良好な関係を築くことができるようになったのではないかと思っております。それは、今現在もプロジェクトメンバーや私にとって、目に見えない重要な資産となっております。

ツールだけでコミュニケーションをせず、直接対話して意図を伝える。

タスクはMECEに分けあう

円滑に進んでいたかに見えたプロジェクトですが、タスクの取りこぼしとか、重複というのがどうしてもポロポロと発生しました。このプロジェクトでは、課題管理表やバグトラッキングシステムを駆使して、タスクや課題に対して担当者の割り当てもかかさず行っておりましたが、それでもタスクの漏れや重複というのが発生しました。

その原因は、プロジェクトメンバー内の責務におけるタスク担当範囲を明確にしていなかったことにありました。

プロジェクトアサイン時に、K部長からプロジェクトで期待するロールを提示されておりましたが、互いのロールが重なるような部分、または重ならない部分についてのタスク担当までは、当然ですが細かい指示はありませんでした。

そこで、プロジェクトメンバーとリーダーである私との間で、互いが期待されているロールにおけるタスクの担当範囲を明確にするため、日々コミュニケーションを重ねながら、タスクの割り当てを行いました。どっちが担当すべきか判断がつかないタスクや事象が発生した場合は、コミュニケーションを重ね、担当者を確認し、そして互いに納得してから作業を行うこととしました。

次第に、このコミュニケーションは減っていきました。それは、プロジェクトが進んでいくに連れて、私も含めたプロジェクトメンバー同士が、互いのロールを尊重したうえで、自発的にタスクを消化して、こぼれ落ちそうなタスクを拾ってくれるようになったためです。

プロジェクトメンバーと相談し、タスクをMECEに分けあいましょう。

今回のまとめ

今回の話から得られた教訓をまとめると、以下の3点となります。

  1. コミュニケーションの積み重ね、それがプロジェクトの進行を円滑にします。
  2. ツールに頼らず、メンバーや顧客とは直接コミュニケーションしましょう。
  3. メンバー同士で互いの責務について話し合い、タスクをMECEに分け合いましょう。

これらの3点に共通することとして、物事を円滑に進めるにはコミュニケーションが中心になる、という非常にシンプルなことです。

さて、プロジェクトもうまく回り始めたさなか、インフラ担当をされているSさんと、プログラム開発を終えて、目前に迫った結合テストの準備をされていたHさんが何やら話しております。

「ステージング環境のアプリケーションサーバとデータベースサーバが疎通できないんだけど・・・」

なんか、また問題が出たようです。その話はまた次回にさせていただきます。(続く)

―謝辞-
この記事は、MPS社の証券プロジェクトを進めていく中での実体験をもとに記述されております。同プロジェクトにおいて、私たちプロジェクトメンバーを支えていただいたK部長こと風間淳一郎様、代表取締役社長の小西啓太様、そしてプロジェクトを一緒にすすめてくれた多くの皆様のご協力なくしては、無事完遂することはできなかったと思っております。皆様のご協力に心より感謝申し上げます。