前回は食生活を改善するためのツールをご紹介しました。食生活を改善するための環境は、全て揃っていると言って良いほど充実しています。良いとされる食事は何か?を調べようと思えばたいていの情報は誰でも手に入れることができるでしょう。「バランスのとれた食事」というコンセプトだけでなくその具体例、つまり献立や、実装方法としてレシピがあります。レシピは定量化され、伝達や再現がしやすくなりました。それでも、日本人全てが理想的な食生活を送っているかというと、どうもそうではなさそうです。

食生活改善のために必要な能力とは?

仕組みはあるけれど実践できない、という状況はソフトウェア開発の世界にもありますね。「開発標準はあるけれどプロジェクトに適用できていない」などです。食事バランスガイドの関連コンテンツには、実践のためには次の5つの力を身につけると良いと書かれています。

  1. バランスよく組み合わせて食べる力
  2. 食べ物の味がわかる力
  3. 料理ができる力
  4. 自分の身体を大事にできる力
  5. 食べ物のいのちを感じる力

動物や植物を食べていることを理解して、それらを実際に選び、料理し、食べるのに必要な技術を身につけましょう。技術を身につける必要性も理解しましょう、ということのようです。1〜5がなぜこのような順番になったのか定かではありませんが、どうも重要度の高いものから順に並べたように見えます。でも私なら4の「自分の身体を大事にできる力」を一番上にするでしょう。なぜならそれは、食生活改善のモチベーションそのものだからです。

5. 食べ物のいのちを感じる力
1.バランスよく組み合わせて食べる力
食品を知り、選択できるようになる
※調理済み食品を選択することもある
3.料理ができる力
2.食べ物の味がわかる力
4. 自分の身体を大事にできる力

食事バランスガイドの関連コンテンツには子供用と大人用があり、それぞれ上記5つの力が解説されています。大人用のコンテンツでは「自分の身体を大事にできる力」の解説として、なぜか「朝食は欠かさず食べましょう」としか書かれていません。一方子供用のコンテンツには、「元気になる生活パターン」として「朝・昼・夕の3食 & 早寝早起き」が挙げられています。理由は、子供の時期は骨や筋肉が成長しておりきちんと食事をしないと必要な栄養が足りず身体を作ることができなくなってしまうためですが、私が注目したのはそこではなく、「元気になる生活パターン」という言葉でした。

改善はなんのため?

食を含む生活改善は、「元気になる生活パターン」があるのにそれを知らずに元気じゃない人がいるから、「元気になる生活パターン」を広く知らしめてみんな元気になろう!というのが基本的な考えだと思います。改善する側の人は、もっと元気になりたいから改善します。体調が良くなるのかもしれないし、体型が格好良くなるのかもしれないし、肌がきれいになるのかもしれない。ともあれ、もっと良くなりたいのです。自分や家族が大切です。

ソフトウェア開発プロセスの標準化や改善も、「QCDがもっと良くなるプロジェクトのパターン」があるのにそれを知らずに悲惨な状況の人がいるから、「QCDがもっと良くなるプロジェクトのパターン」を広く知らしめてみんなうまくやろう!というのが基本的な考え方のはずです。改善する側の人は、自分の職業をもっと良くしたいから改善します。やはり自分が大切なのです。よく「属人性の排除」という言葉が使われますが、それはみんなうまくやった結果としてそうなるのであって、本来の目的ではないと思いたいものですね。

そういうわけで、「もっと良くなりたい」という思いがなければ、いくら仕組みがあっても改善は始まりません。改善を提案する側は、著名人の起用や教育機会の提供などで「もっと良くなりたい」という思いを起こさせようとするでしょう。それはそれで良いことだと思いますが、自らが考え、自分の意思で改善に向かっていくのが理想ではないでしょうか。

また、小さなことでも何かを改善してみると、もっと良くなりたいと思えるようになるかも知れません。とりあえず第一歩をふみ出してみるのも手です。

朝食について

最後に、「自分の身体を大事にできる力」の説明に書かれている「朝食は欠かさず食べましょう」について少しふれておきたいと思います。朝食が必要とされる理由はいろいろなメディアで宣伝されているので割愛します。それに、朝食の必要性として言われていることが正しいのかどうか、私にはよくわかりません。(私は「食べないとお腹が空く」という理由で食べています。)ただ、食事記録をつけ、食事摂取基準を満たす食事をしようとすると、思いの外たくさんの食品を摂取しなければならないことがわかります。朝起きて夜寝る人にとっては、朝食というチャンスを逃してしまうと、昼と夜で全てを摂取しようとしても難しいのです。ですので、「食べるチャンス」としても朝食はおすすめです。

以前雑誌の記事かなにかで間食に鶏肉料理を食べるようにしている方のインタビューを読んだことがあります。間食というと甘いものやスナック菓子を連想してしまいますが、間食として気軽に野菜や肉を食べられる環境になれば、また違った食習慣が提案されるかもしれませんね。

参考文献

食品バランスガイド

次回は

次回は栄養学の歴史をご紹介する予定です。栄養学の歴史を知ると本当に、現代の日本に生まれてよかったなあと思います。今の私たちの悩みは「食べ放題の状況でいかに嗜好におぼれることなく選択するか」。 とても贅沢な悩みです。