こんにちは、豆蔵で要求開発を担当している上山(うえやま)です。

本連載では、良くわからない、敷居が高いと敬遠されがちな『要求開発』について、実際のプロジェクトでの要求開発の適用シーンをあげて解説していきます。

題材として、要求開発のニーズが高いシステム開発を前提とした『要求開発』を取り上げます。

第1回の今回は、イントロダクションとして『要求開発』とはどんなものかについてご説明します。

要求開発がなぜ必要か?

要求開発が必要となる背景として、まずシステム開発の現状について確認しておきましょう。

日経コンピュータ(2008年12月1日号)によると、システム開発プロジェクトの成功率は平均31.1%ということです。なんと7割近くのプロジェクトが失敗していることになります。
この数字は、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)が予定通りか否かで評価した値ですので、システム化の目的が達成され、満足いくシステムが完成したかということになると更に成功率は低下します。
それを裏付けるように、システム開発の現場では、プロジェクトの失敗例にことかきません。

プロジェクトの失敗原因の多くは、要件定義以前のシステム開発の前段階に起因しています。
システム開発の前段階で、正しい要求が導けないと、いくらシステムを正しく作っても、間違ったシステムが出来上がってしまいます。結果、テストの段階で問題が露呈することになり、納期遅れや追加開発によるコスト超過といった問題を引き起こします。

また、正しい要求が導けず、余計な機能まで作り込むケースも多く見受けられます。
スタンディッシュ・グループによると、完成したシステムの64%の機能が使用されず無駄になっているという調査結果がでています。

システム開発プロジェクトの成功率を高め、狙い通りの効果を得るには、正しい要求を獲得することが重要になります。
これから説明する『要求開発』とは、クライアントの正しい「要求」を「開発」する方法論です。

なぜ、要求を正しく導けないのか?

なぜ、要求を正しく導けないのでしょうか?
それは、現在の企画プロセスの進め方に原因があります。

この分野については、各社とも試行錯誤で進めている状況で、標準的なやり方が整備されていません。
とりあえず関係者や声の大きそうな人を集めてヒアリングし、結果を取りまとめるというケースをよく見かけます。
図をご覧下さい。ここでユーザが出した要求は、その個人が携わる業務の範囲内のニーズで、全体を見通したものではなく、ある個人の視界に基づくものです。
従って、ヒアリングにより獲得した要求を繋ぎあわせて、ユーザの希望通りのシステムを開発しても、システム化の狙いが達成できるとは限らないのです。

図:個人の視界
図:個人の視界

正しい要求が既に存在しているという前提に立って作業を進めていますが、実際にヒアリングにより獲得した要求は、ユーザの理解の範囲内で生まれた属人的、場当たり的、直感的なもので、必ずしも存在していると言えるほど論理的に整理されたものではありません。

正しい要求とは、システム化の狙いを実現するには、業務はどうあるべきかを考え、そこから作り上げていくものなのです。『要求開発』という言葉には、この様な意味が込められています。

要求開発とは

『要求開発』とは、ビジネス上の要求を元に、業務の設計・再設計を行い、情報システムが担うべき要求(システム要求)を導き定義する活動です。

活動の内容は、戦略に直結したシステムを実現する為の目的の明確化、ビジネスモデリングによる業務の可視化、あるべき業務の設計、システム化計画の策定を行います。

要求開発アライアンス(※1)が『要求開発方法論』(オープンソロジー:Open Enterprise Methodology)を策定しています。

『要求開発方法論』は、2005年1月に0.6版が発表され、2006年3月に1.0版として改訂されています。0.6版は要求開発アライアンスのホームページから、1.0版は書籍『要求開発』(日経BP社)として提供されています。

1.0版の発表以降、要求開発アライアンスに寄せられた、実プロジェクトへの適用経験からのフィードバック、新たに開発された方法論の提案などを加味した形で、現在、2.0版への改訂作業が進められています。今年の夏ごろまでにはドラフト版を開示する予定です。

『要求開発方法論』は以下の要素で構成されています。

  • プロセス (どのような順番でどのような作業を行うか)
  • 手法 (どのような観点で調査、分析、設計、検証を行うか)
  • 成果物 (何を作成すべきか) ※成果物テンプレート有
  • 組織 (どのような組織で作業を行うか)

この方法論は、一線で活躍するユーザ企業、SIer、コンサルタントなど様々な立場の人間が、企業の垣根を越え知恵を集結して作成しているものです。

会員企業各社で実践した要求開発プロジェクトの経験が活かされ進化をしており、実践に即したものとなっています。

要求開発を適用することで、必要なポイントを一通り網羅した抜けのないプランニングが行えるようになります。


次回は、要求開発方法論の内容について解説します。

※1: 要求開発アライアンスは、「要求はあるものではなく、開発するものである」というスローガンのもと、要求開発の体系化を目指し2005年に設立されました。 現在は、300名以上の会員を有する団体へと成長しています。